「オーダースーツ」の価値について

『なぜオーダースーツが必要なのか?』

このことを真剣に考え、明確に答えて来た人はいないのではないかと 思っています。
もしかしたら、みんなが触れたくないタブーネタなのかも知れません。
でも、今日は書いてしまいます。

まずは『なぜスーツが必要なのか』という議題が必要ですね。 そこから行きましょう。
『スーツがグローバルスタンダード』というのは紛れもない事実です。
ですが、これだけに甘んじて『だからスーツ市場は無くならない』って 考えてしまうのは、
少々甘い見通しと言わざるを得ません。 世界規模で大きな流れが変わっている現状では、
もしかすると 新たなグロ-バルスタンダードが生まれる可能性があるからです。

具体的な可能性を挙げるならば筆頭は“環境問題”ですね。 CO2の削減は10年以上前から
本格的に叫ばれており、 日本でも“クールビズ”というキーワードを掲げて、
正装の象徴でもあった ネクタイを外すスタイルが5年位前から普及していきています。
“紳士の正装”を優先するのか、“環境問題”を優先するのか、 このあたりは紙一重の
ところまで来ていると言えます。

だが、ボクはあえて“紳士の正装”論を推したい。と考えています。
スーツスタイルのルーツは諸説ありますが、軍服からの流れを 汲んでいるのは事実だと
言えます。
戦争は断じて絶対によくないものですが、 大勢の人間を“律する”ために活用された軍服
の役割や機能性には、 現在や未来においても守るべき部分があると考えます。
世界中の万人がマナーや礼節なく生活してしまったら、それこそ いずれ平和な秩序が
崩れてしまうと思えてならないのです。

ビジネスでも政治でもヒトを動かすような立場にある人物には、 「権力」ではなく、
周囲からの「尊敬」や「信頼」や「期待感」を得てこそ そこで初めてヒトの心を動かせる
はずで、基本的にはそうであってほしいと 思います。
その場合にその人がTシャツにジーンズという服装なのか、 ビシッとネクタイを締めた
凛々しい姿なのか。 こういう意味でスーツが必要なのだと考えます。
人々に与える印象が、 目に見えない不思議な力の働きによって全然違ってくるのです。

そうしたときにさらに差がついてくる部分があります。
袖が長くブカブカのスーツを着ている人、 色んな箇所にシワが多く出てしまっている人、
ジャストサイズでシュッと端正に着ているスマートな人。
この中で「目に見えない不思議な力」を発揮するのはいったい誰なのでしょうか?
こういうシーンにおいてこそ、細かくメジャーで採寸された オーダーメイドスーツの
価値が大いに発揮されるのです。信頼感や安心感に繋がる不思議な力です。

長くなりましたが、こういうロジックをベースとして、
ボクはオーダーメイドドレスウェア業界を守る活動を やっていきたいのです。
「きちんとスーツを着る社会は、世の中にマナーを提供する」
そう、心から思うからです。

※補足※
オーダースーツだけを重視し既製品を否定する話ではないです。
既製品で見事にジャストサイズを得られる場合は、それはそれで よいことだと
考えていますヨ。